そもそも「金利」とはお金を借りる時、借りた金額に対してどれくらいの割合で利息(利子)が発生するのかを表すのが「金利」です。
したがって金利は資金を借りる(貸す)ときの費用といえます。
金利
金利には大きく二つあります。
市場金利:市場において自由に決まる金利
市場金利は、預金金利や貸出金利など、市場において自由に決まる金利です。市場金利は、経済状況や金融市場の動向などによって変動します。
政策金利:中央銀行が金融政策の一環として決定する金利
政策金利は、中央銀行が金融政策の一環として決定する金利です。政策金利は、経済や物価の安定を図るために、中央銀行が意図的に操作します。
金利は、経済や金融に大きな影響を与える重要な指標です。金利が上昇すると、借り入れコストが高くなるため、企業の投資や消費が抑制され、経済成長が鈍化します。一方、金利が低下すると、借り入れコストが低くなるため、企業の投資や消費が活発化し、経済成長が加速します。
む、難しい。。
今までなんで金利が上がったり下がったりしてるのか良く分からなかったけど、経済のコントロールをする役割もあったということだよね…!?
そうなんだよ。
今米国の政策金利は過去に例がないほど高く、なんとかインフレを抑制しようとしているんだけど、やっと最近インフレが落ち着いてきたので金利も下がり始めたところなんだ。
このあと詳しく説明していくよ。
国債
そもそも国債とはなんなのかですが、国が発行する債券のことです。
国がお金が必要になり、資金調達のために発行した債券を「国債」と言います。
国債は決まった期日とその時に設定した利率があり、償還日(満期)まで保有していれば、額面金額が全額戻ってくるのと、保有している間も決まった利率の利息を受け取れる特徴があります。
これはなんとなく知ってたよ。比較的安心して運用ができる代わりに利率が低いんだよね。
そうだね。国債は国が破綻しない限りは安定している資金運用と言える。日本だと利率が低いのでこの記事を書いてる時で日本国債10年の金利が0.665%と低いのに対して米国国債10年の利率は4.241%とかなり高くなっているんだ。
金利が与える国債の影響
金利と債券って関係あるのかというところですが、私も最近まで全くの知識不足で知らなかったんですけど、完全にセットとして考える必要があるんですね!ここが超重要なんです。
金利と債券は逆相関の関係になります。
金利が上がれば、債券価格が下がります。
金利が下がれば、債券価格が上がります。
どういうことなんだ…
国債は、満期時に元本と利息を受け取る権利を売買する商品だからです。金利が上昇すると、国債を保有することで得られる利息の価値が低下するため、国債の価格は下落します。逆に、金利が低下すると、国債を保有することで得られる利息の価値が高まるため、国債の価格は上昇します。
例えば、
満期時に受け取る元本が100万円の10年物の債券で、金利が5%の場合、債券価格は約621,000円となります。
一方、金利が10%の場合、債券価格は約512,000円となります。
このように、金利は債券価格に大きな影響を与えるため、債券を投資対象とする際には、金利の動向を注視する必要があります。
分かったような、分からないような…
とりあえず金利と債券価格がシーソーのような関係というのは分かった。
現在の米国金利
2023年12月6日現在、連邦準備制度理事会(FRB)が決定するフェデラルファンド金利(FF金利)が、5.5%となっています。これは、2022年3月に0.25%から0.5%に引き上げられて以来、10回連続の利上げを行ってきたからです。
米国が金利を上げてきた理由は、インフレ抑制を目的としたものでした。
米国のインフレ率は、2022年5月に8.6%に達し、1981年12月以来、約40年ぶりの高水準となりました。このインフレ率の高騰は、新型コロナウイルス感染症拡大からの経済回復に伴う需要の急増や、ウクライナ情勢によるエネルギー価格の高騰などが主な要因となっています。
FRBは、インフレ率を2%に抑制することを目標としており、インフレ率の高騰を容認することはできません。そのため、インフレ抑制を最優先とし、利上げを実施してきました。
また、市場金利である10年物国債利回りは、10月後半に5.00%を超えました。これは、22年ぶりの高水準です。
このように、米国の金利は、2022年以降、急速に上昇していました。これは、FRBが、インフレ抑制を目的として、積極的な利上げを実施していたためです。
そしてここからが本題です。
10月31日~11月1日にFOMC(米連邦公開市場委員会)を開催し、大方の事前予想通り政策金利であるFF(フェデラル・ファンド)金利の誘導目標を5.25-5.50%に据え置くことを決定しました。
FRBが2会合連続で利上げを見送るのは、2022年3月会合で利上げを開始して以降初めてです。
また最近のニュースを見るとインフレが抑制され、利上げ観測が後退している。
米国労働省統計局が11月14日に発表した米10月のCPI(消費者物価指数)ではエネルギーと食品を除く米10月のコア消費者物価指数(CPI)は前年比4%上昇、市場予想の4.1%を下回り、2021年9月以来の低水準。前月から小幅の減速にとどまり、インフレ圧力の根強さを示した。
米労働省が11月15日に発表した10月のPPI(生産者物価指数)が前月比で0.5%下落し、市場予想の0.1%上昇を大幅に下回り、下落幅は2020年4月以降で最大、インフレ鈍化を示唆する内容となり、米FRBによる追加利上げ観測が後退している。
以上のことから米債券市場では、米金融当局が来年5月までに利下げに転じるとの観測が高まっている。
もう分からない言葉が多すぎて無理だよ。
FRB、CPI、PPI、頭に入ってこないよ。。
ちょっと内容が難しくなっているので、ここでは米国金利が上がっているけど、そろそろ利上げが終わるのではくらいに理解してくれればいいよ。
まだ利上げは続くというニュースもあるし、一概に利下げフェーズに入ったとは言えないんだけど、米国の利上げが終わるニュースが増えてきたってことだね!
米国債券
次に米国債券がどうなっているのか見ていきましょう。
債券の価格は、額面に対する割合(百分率)で表示されます。たとえば、額面が1,000円で、市場価額が990円の場合、債券価格は99となります。
つまり額面(満期に受け取る元本)によって発行価格が変わってくるので一概にいくらだとかが表現しづらいです。
米国金利と債券の連動性
ここでは米国債の価格に連動して動くETFの【EDV】のチャートを見ていきましょう。
ETFとはExchange Traded Fund の頭文字を取ったもので、文字通り取引所(Exchange)で、取引される(Traded)、投資信託(Fund)、のことです。日本語では「上場投資信託」といいます。
米国債価格と連動していればどんなETFでも良かったのですが、今回はEDVにしました。
【EDV(Vanguard Extended Duration ETF)】は「ブルームバーグ・バークレイズ米国債STRIPS(20-30年)均等額面インデックス」の動きに連動する投資成果を目指す米国ETFです。
残存期間20年以上の米国債だけで構成されているETFなのですが、2020年の中盤あたりからずーっと下がってきているのがわかると思います。先に述べたように債券は金利と連動しているので金利が上がってきてたので、【EDV】も下がってきていたということです。
次に金利のチャートを見てみましょう。
【米国債20年】の金利のチャートとなります。
2023年10月23日の5.38%をピークに金利が下がってきています。これは金利の説明でもしたように、相次ぐ米国の景気原則を示すデータが発表され債権の需要が高まり、金利が低下してきているのです。
先に紹介した債券価格と連動する【EDV】と比較してみてください。
金利と債券の価格が逆相関の関係になっていることが分かると思います。
また、最近になってFRBの当局者からは、インフレ抑制を最優先としながらも、景気への影響を考慮して、利上げペースを緩和する可能性があるとの発言が相次いでいます。
このFRB当局者の「ハト派」寄りのメッセージは、市場に安心感を与え、債券の需要を高めています。そのため、債券価格が上昇し、金利は下落しています。
こうしてチャートで見比べると分かりやすいね!
確かに金利が上がっていくときに債券価格が下がって
金利が下がると債券価格が上がっているね。
そうなんだ。色々難しいこと言ってきたけど、比較するとほぼアシンメトリーな動きになってるよね。そしてこれから金利が下がっていくことが予想されているので、ということは…!?
債券の価格に連動したETF
では米国債券投資をすればいいじゃないかということで、いくつか債券の価格に連動したETFを紹介します。
EDV
シンボル | EDV |
名称 | バンガード・超長期米国債ETF |
主な投資対象 | 米国国債(超長期) |
経費率 | 0.05% |
決算回数 | 4回 |
決算日 | 3,6,9,12月 |
分配金利回り | 3.70% |
基準株価 | $76.54(2023年12月5日時点) |
先ほどすでに軽く紹介していますが、残存期間20年以上の米国債のみで運用しているETFになります。
残存期間が20~30年の米国財務省証券ストリップス債のパフォーマンスと連動しています。
ETFなので経費がかかりますが、0.05%ととても低い経費率となっております。。また、分配金も四半期に一度配られるので3.7%の利回りは悪くないと思います。
ストリップ積とは
利付債の元本部分と利札部分を分離して、それぞれをゼロクーポンの割引債として販売されている債券のことです。
簡単に言うと利息は無いが額面価格より割引された金額で購入でき、満期になれば設定された額面がもらえるというものです。
TLT
シンボル | TLT |
名称 | iシェアーズ 米国国債 20年超 ETF |
主な投資対象 | 米国国債(超長期) |
経費率 | 0.15% |
決算回数 | 12回 |
決算日 | 毎月 |
分配金利回り | 3.48% |
基準株価 | $94.61(2023年12月5日時点) |
【TLT】は【EDV】に似てますが、20年を超える米国長期国債と同じ値動きを目指しています。
【EDV】との違いは若干経費率が高いのと、配当金が毎月支払われるということですね。
基本的に紹介した二つはほとんど動きが同じなので迷うなら分配金の支払い回数で選ぶのも一つかもしれません。
なぜ長期国債を対象としているETFを紹介しているかというと、長期国債ファンドの方が値動きが激しいからです。この22年ぶりの高水準である金利高が終わろうとしている今、金利が低下する可能性がとても高いので値動きが少ない短期国債ではなく、長期国債を強くお勧めしたいです。
TMF
シンボル | TMF |
名称 | Direxion デイリー 20年超米国債 ブル3倍 ETF |
主な投資対象 | 米国国債(超長期) |
経費率 | 0.75% |
決算回数 | 4回 |
決算日 | 3,6,9,12月 |
分配金利回り | 3.14% |
基準株価 | $57.16(2023年12月5日時点) |
そして今一番お勧めしたいETFが【TMF】です。
【EDV】【TLT】と同様に長期国債に連動しているのですが、20年を超える米国債の値動きの3倍を目指すレバレッジ型のETFとなります。
レバレッジと聞くとその分値動きも激しくなるので本来なら少し怖い商品ではあるのですが、上のチャートを見てもらっても分かる通り、過去最安水準の価格になっております。なぜなら米金利が過去類を見ないほどの高水準だからです。
私も少しづつ購入しておりますが、現在57ドルだとして今後金利が下がっていけば2倍、3倍くらいになる可能性は低く無いでしょう。
逆に下がる可能性ももちろんあるのですが、金利が上がり続けることはないので、この最安水準で持てるならまた価格が上がってくるのは想像できます。
シナリオ
今後米国債の金利が下がってくると主な理由は以下の4つです。
今後金利が下落する四つの理由
⭕️ 相次ぐ米国の景気減速を示すデータ
⭕️ 米財務省が長期債の発行抑制を発表
⭕️ 債券売りポジションの巻き戻し
⭕️ 米連邦準備理事会(FRB)の「ハト派」寄りのメッセージ
順に説明していきます。
相次ぐ米国の景気減速を示すデータ
11月14日に発表した米10月のCPI(消費者物価指数)ではエネルギーと食品を除く米10月のコア消費者物価指数(CPI)は前年比4%上昇、市場予想の4.1%を下回り、2021年9月以来の低水準。
11月15日に発表した10月のPPI(生産者物価指数)が前月比で0.5%下落し、市場予想の0.1%上昇を大幅に下回り、下落幅は2020年4月以降で最大。
これらのデータは、米国経済が減速していることを示唆しています。景気減速の懸念が高まると、債券の需要が高まり、金利は下落します。
米財務省が長期債の発行抑制を発表
米財務省は、2023年12月、2024年度の財政予算案を発表しました。この予算案では、長期債の発行を抑制する方針が示されています。
長期債の発行抑制は、債券の供給を減らすため、債券価格の上昇と金利の下落につながります。
債券売りポジションの巻き戻し
2023年後半には、債券売りポジションが巻き戻される動きがみられました。債券売りポジションとは、債券を売却することによって、金利を押し上げることを目的とする投資手法です。
債券売りポジションの巻き戻しは、債券の買い需要を高め、金利の下落につながります。
米連邦準備理事会(FRB)の「ハト派」寄りのメッセージ
FRBは、2023年7月26−27日に開催した連邦公開市場委員会(FOMC)で、FF金利を0.75ポイント引き上げ、誘導目標レンジを3.25%−3.50%としました。しかし、その後、FRBの当局者からは、インフレ抑制を最優先としながらも、景気への影響を考慮して、利上げペースを緩和する可能性があるとの発言が相次いでいます。
このFRB当局者の「ハト派」寄りのメッセージは、市場に安心感を与え、債券の需要を高めています。そのため、債券価格が上昇し、金利は下落しています。
上記のことから米国金利が低下されると予想されますが
・インフレ率の推移
・経済成長率の推移
を中心に今後の動向を見ていきたいです。
今後のシナリオ
実際にお勧めしているETFの【TMF】の今後のシナリオ予想です。
A このまま債券価格が順調に上がっていく。
B 金利の利上げがもう一度あり、再度下がるもその後上がっていく。
2024年には米国金利が下がると予想されていることから今より上がっていくことは想像できるが、今の米国金利が来年の利下げをすでに織り込み始めており、このまま順調に上がっていくかは少し疑問が残ります。
為替
そして忘れてはいけないのが為替です。
いくらETFで値上がりしても円高になれば日本円としての価値が低くなります。もちろんドルで持っておく場合は関係ないのですが…
仮に現在1ドル147円が1ドル118円になったら20%相当の円高となり、【TMF】が57ドルだとして68ドルにならないと円にした時に損をします。
そこまでの円高にはまだまだ時間もかかると思いますし、為替のスピードよりもTMFが値上がりする方が早いと思ってますけどね。。
1ドル147円 【TMF】が57ドルとした場合の損益分岐点は以下になります。
1ドル | TMF | |
---|---|---|
現在 | 147円 | 57ドル |
10%円高 | 140円 | 60ドル |
10%円高 | 132円 | 62ドル |
15%円高 | 124円 | 65ドル |
20%円高 | 118円 | 68ドル |
まとめ
高配当銘柄は確かに安定しており、魅力的なテーマの一つなのですが今ほど債券がチャンスな時はもうしばらくなさそうなので話が長くなってしまいましたが記事にさせていただきました。
一度債券で資産を増やして高配当株に投資するという選択も大アリだと思います!
是非今後の金利と債券の動きを楽しく追っていきましょう。