本記事は、宇宙関連ビジネスの将来性を配当投資家の目線で掘り下げ、宇宙事業を展開しつつ配当も出している日本の大手5社を分析しています。
宇宙テーマに興味はあるけれど「スタートアップは無配で手が出しにくい」「大手企業の宇宙事業ってどのくらい本気なの?」と感じている方に、投資判断のヒントとなる内容に絞ってまとめておりますので、ぜひ参考にしていただけると幸いです。
本記事投稿時点(2026年6月19日)の宇宙産業トピック
世界の宇宙経済は急速に拡大しています。2035年には約1.8兆ドル(約270兆円)規模に達する見通しで、もはやSFの世界ではなく巨大な投資テーマになっています。
日本政府も2024年に閣議決定した「宇宙基本計画」で、2030年代早期に国内宇宙産業の市場規模を現在の約4兆円から8兆円へ倍増させる目標を掲げました。さらに2040年には13兆円を目指すロードマップを描いています。
これを後押しするのが、10年間で1兆円規模の「宇宙戦略基金」です。JAXAを通じて民間企業やスタートアップへの資金支援が進められており、輸送・衛星・探査のあらゆる分野で官民連携が加速しています。

宇宙テーマは「夢の技術」から「国策産業」にステージが変わった。防衛費増額ともセットで、長期的な追い風が吹いている分野だ。
宇宙産業が注目される3つの理由
- 国策テーマ:政府が宇宙戦略基金(10年間1兆円)を通じて産業育成を全面支援。防衛予算の増額(GDP比2%)とも連動し、宇宙の安全保障利用が拡大中
- H3ロケット成功:2024年の3号機成功で日本の自前ロケットが復活。商業打ち上げの受注が本格化し、三菱重工を中心としたサプライチェーン全体が恩恵を受ける
- 衛星コンステレーション需要:通信・測位・地球観測で数百〜数千基の小型衛星ネットワーク構築が世界的に進行。衛星メーカーや部品サプライヤーに膨大な需要が発生
💡 配当投資家の視点
宇宙スタートアップの多くは無配・赤字段階です。配当投資家としては、本業が安定している大手企業の宇宙関連事業に注目するのが現実的な戦略です。防衛・重工・電機の大手なら、宇宙テーマの成長を享受しつつ安定配当も受け取れます。
宇宙関連銘柄5社
今回取り上げる5社は、いずれもH3ロケット・人工衛星・宇宙用エンジン・衛星通信システムなど、日本の宇宙開発の中核を担う企業です。配当利回り・DOE(株主資本配当率)・業績推移の観点で分析します。
| 銘柄 | コード | 主な宇宙事業 | 配当利回り | DOE |
|---|---|---|---|---|
| 三菱重工業 | 7011 | H3ロケット製造 | 0.74% | 4%以上 |
| IHI | 7013 | ロケットエンジン | 0.82% | — |
| 三菱電機 | 6503 | 人工衛星製造 | 0.99% | 3% |
| NEC | 6701 | 衛星通信・SSA | 1.06% | — |
| 川崎重工業 | 7012 | フェアリング製造 | 1.25% | 4% |
【7011】三菱重工業株式会社
- H3ロケットの製造元として、日本の宇宙輸送の根幹を担う。2024年の3号機成功で商業打ち上げを本格受注開始
- 防衛・エネルギー(ガスタービン世界首位級)・航空の3本柱で、売上5兆円規模の巨大グループ
- 2026年3月期の純利益は3,321億円と過去最高を更新。防衛費増額の恩恵を直接受けるポジション
- DOE4%以上を掲げる累進配当方針。株価上昇で利回りは低いが、増配は継続
- 2024年4月に1:10の株式分割を実施。個人投資家が買いやすくなった

株価:3,917円(6/19終値)
売上利益予想:増収増益
配当金予想:29円(連続増配中)
配当利回り予想:0.74%
株主優待:ナシ
| ROE | ROA | 配当金 | 配当利回り | 配当性向 | |
|---|---|---|---|---|---|
| 2024年3月期 | 11.1% | 5.4% | 20円 | — | 30.3% |
| 2025年3月期 | 10.7% | 5.8% | 23円 | — | 31.5% |
| 2026年3月期 | 12.2% | 6.4% | 25円 | — | 25.3% |
| 2027年3月期(予想) | — | — | 29円 | 0.74% | — |

三菱重工は「日本の宇宙開発=三菱重工」と言っても過言ではない存在。ROEも12%台と重工セクターでは極めて高水準で、経営効率も改善が進んでいる。配当利回りは低いが、増配ペースと株価成長で十分なリターンが期待できる銘柄だ。
【7013】株式会社IHI
- H3ロケットの第2段エンジン「LE-5B-3」を開発・製造。ロケットの心臓部を手がける技術力は世界でもトップクラス
- 民間航空エンジン事業が急成長の柱。世界的な航空需要回復でアフターマーケット収益が急拡大
- 2024年3月期は航空エンジン関連の費用発生で赤字682億円と苦戦したが、2025年3月期にV字回復で純利益1,127億円
- 2026年3月期は純利益1,610億円と過去最高益を更新。ROEも28%台と驚異的な水準に
- 2025年10月に1:7の株式分割を実施。分割前は株価が1万円超だったため、個人投資家にとっては買いやすさが大幅改善

株価:2,817円(6/19終値)
売上利益予想:増収増益
配当金予想:23円(増配基調)
配当利回り予想:0.82%
株主優待:ナシ
| ROE | ROA | 配当金 | 配当利回り | 配当性向 | |
|---|---|---|---|---|---|
| 2024年3月期 | △16.9% | △3.3% | 14.3円 | — | —(赤字) |
| 2025年3月期 | 26.3% | 5.0% | 17.1円 | — | 16.1% |
| 2026年3月期 | 28.4% | 6.6% | 20.0円 | — | 13.2% |
| 2027年3月期(予想) | — | — | 23円 | 0.82% | — |

IHIは2024年3月期の赤字から1年でROE28%のV字回復!航空エンジンのアフターマーケットビジネスが利益の源泉で、配当性向はまだ13%台。増配余地が非常に大きい銘柄と言える。
【6503】三菱電機株式会社
- 人工衛星の製造で国内トップクラスの実績。通信衛星・気象衛星・地球観測衛星など幅広い衛星を手がけ、「ひまわり」シリーズも同社の製造
- 宇宙事業のほか、FA(ファクトリーオートメーション)・半導体・空調・昇降機など事業の多角化が進み、安定的な収益基盤を構築
- 2026年3月期は売上高5兆8,947億円、純利益4,077億円と3期連続の増収増益を達成。営業利益率も着実に改善
- 調整後DOE3%程度を目安とした配当方針。50円→50円→55円→60円(予想)と着実に増配を実施
- ROEは2024年3月期の7.9%から2026年3月期には9.7%まで改善。経営改革の成果が数字に表れている

株価:6,051円(6/19終値)
売上利益予想:増収増益(3期連続)
配当金予想:60円(連続増配中)
配当利回り予想:0.99%
株主優待:ナシ
| ROE | ROA | 配当金 | 配当利回り | 配当性向 | |
|---|---|---|---|---|---|
| 2024年3月期 | 7.9% | — | 50円 | — | 36.8% |
| 2025年3月期 | 8.4% | 7.0% | 50円 | — | 32.1% |
| 2026年3月期 | 9.7% | 7.7% | 55円 | — | 27.7% |
| 2027年3月期(予想) | — | — | 60円 | 0.99% | — |

三菱電機は衛星メーカーとしての実力が折り紙付き。FA・半導体関連でもしっかり稼いでいるから、宇宙事業だけに依存しない安定感がある。DOE基準の配当で減配リスクも小さい銘柄だ。
【6701】日本電気株式会社(NEC)
- 衛星通信システムや宇宙状況把握(SSA)システムを開発。宇宙空間の「交通管制」に相当する重要インフラを担う
- 小惑星探査機「はやぶさ2」のイオンエンジンもNECの技術。宇宙探査の分野でも世界レベルの実績
- 本業はDX・サイバーセキュリティ・5Gネットワーク。IT大手として安定的な収益基盤を持ちつつ、宇宙・防衛分野が成長ドライバー
- 2026年3月期は純利益2,702億円と前期比54%増の大幅増益を達成。ROEも13.03%と大幅改善
- 2025年4月に1:5の株式分割を実施。安定的増配方針で、配当性向はまだ約19%と増配余地が大きい

株価:3,756円(6/19終値)
売上利益予想:増収増益
配当金予想:40円(連続増配中)
配当利回り予想:1.06%
株主優待:ナシ
| ROE | ROA | 配当金 | 配当利回り | 配当性向 | |
|---|---|---|---|---|---|
| 2024年3月期 | 8.5% | 3.5% | 24円 | — | — |
| 2025年3月期 | 9.1% | 4.1% | 28円 | — | — |
| 2026年3月期 | 13.0% | 6.1% | 38円 | — | 18.7% |
| 2027年3月期(予想) | — | — | 40円 | 1.06% | — |

NECは「はやぶさ2」の実績に加え、サイバーセキュリティ×防衛の成長が目覚ましい。配当性向18.7%は5社中で最も低く、今後の増配ペース加速が最も期待できる銘柄だと個人的には見ている。
【7012】川崎重工業株式会社
- H3ロケットのフェアリング(先端カバー)を製造。衛星を宇宙空間まで守る重要部品を担当
- 防衛ヘリコプター・航空機・潜水艦など防衛分野に幅広く展開。航空宇宙事業は売上全体の約15%
- 2026年3月期の純利益は1,081億円と過去最高を更新。売上も2兆3,112億円で初の2兆円超え
- 2026年3月期からDOE4%基準の新配当方針に転換。従来の配当性向30%基準より安定的な還元が期待できる
- 2026年4月に1:5の株式分割を実施。水素エネルギー事業への大型投資も進行中で、中長期の成長テーマが豊富
- ROEは2024年3月期の4.2%→2026年3月期13.7%へ大幅改善。収益構造の変革が数字に表れている

株価:3,191円(6/19終値)
売上利益予想:増収増益(過去最高益更新中)
配当金予想:40円(DOE4%基準で安定増配)
配当利回り予想:1.25%(今回5社中最高)
株主優待:ナシ
| ROE | ROA | 配当金 | 配当利回り | 配当性向 | |
|---|---|---|---|---|---|
| 2024年3月期 | 4.2% | 1.0% | 10円 | — | 33.0% |
| 2025年3月期 | 13.2% | 2.9% | 30円 | — | 28.5% |
| 2026年3月期 | 13.7% | 3.3% | 34.2円 | — | 26.4% |
| 2027年3月期(予想) | — | — | 40円 | 1.25% | — |

川崎重工はDOE基準への切り替えで配当の安定性がグッと増した。ROEも4%→13%台への改善が劇的で、「攻めの経営改革」が進んでいる。水素事業の成長が花開けば、さらなる飛躍も期待できる銘柄だ。
ピックアップ銘柄【7013】IHI
5社の中で特に注目したいのがIHIです。2024年3月期の赤字決算から、わずか1年でROE28%超のV字回復を果たしたそのダイナミズムは、他の4社にはない魅力があります。
航空エンジンのアフターマーケットビジネス(メンテナンス・部品交換)は、一度エンジンを納入すれば数十年にわたり安定収益を生む「ストック型ビジネス」の性格を持っています。世界的な航空需要の回復とともに、このセグメントの利益率が急上昇しています。
宇宙分野では、H3ロケットのエンジンに加え、次世代宇宙輸送技術の研究開発にも参画。防衛予算の増額に伴う防衛用エンジンの需要増も追い風です。
📊 IHIの注目ポイント
・配当性向わずか13.2%→増配余地が5社中で最大
・ROE28.4%は重工セクターで異次元の高水準
・航空エンジンのアフターマーケット収益は今後も拡大基調
・1:7の株式分割で投資しやすい価格帯に

IHIは配当利回りだけ見ると地味だが、配当性向13%で増配余地が最も大きく、ROE28%の収益力は圧巻。宇宙×航空×防衛の三拍子が揃った銘柄として、長期で注目に値するぞ。
まとめ
宇宙関連銘柄は「高配当」というよりも「成長×安定配当」の組み合わせが魅力です。配当利回りだけ見ると1%前後と控えめですが、以下の点で中長期投資家にとって注目のテーマです。
- 全社増益基調:5社すべてが増収増益トレンド。防衛費増額・宇宙戦略基金の追い風が継続
- ROE改善:特にIHI(28%)・NEC(13%)・川崎重工(14%)の改善幅が目覚ましく、経営効率が向上中
- DOE基準の増配:三菱重工・三菱電機・川崎重工がDOE基準を導入。業績の波に左右されにくい安定配当
- 増配余地:IHI(配当性向13%)・NEC(19%)は増配の余力が特に大きい
| 銘柄 | コード | 配当利回り | ROE | 配当性向 | DOE |
|---|---|---|---|---|---|
| 三菱重工業 | 7011 | 0.74% | 12.2% | 25.3% | 4%以上 |
| IHI | 7013 | 0.82% | 28.4% | 13.2% | — |
| 三菱電機 | 6503 | 0.99% | 9.7% | 27.7% | 3% |
| NEC | 6701 | 1.06% | 13.0% | 18.7% | — |
| 川崎重工業 | 7012 | 1.25% | 13.7% | 26.4% | 4% |

宇宙テーマは「夢」だけでなく「国策」。防衛費拡大とセットで長期的な追い風が続くと見ている。配当狙いなら大手を軸に、宇宙テーマを「サテライト投資」するのが賢い戦略だ!
※投資は自己責任で行ってください。本記事は特定の銘柄の購入を推奨するものではありません。掲載データは2026年6月19日時点の情報に基づいています。配当金は株式分割調整後の数値を使用しています。